趣味の寺社関係、日本の神様や仏様関係に関するブログです。本業は名古屋市内の呉服店です。

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加藤大幾

Author:加藤大幾
名古屋市西区の着物屋店主です。こちらのブログ(青)は趣味・興味があることを中心に書いて行こうと思います。

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◆恵比寿神について

七福神の中にも入っています恵比寿様。あの鯛と釣り竿を持っているふくよかなお顔の神様ですが、福の神であること、大黒様と一緒に祀られるということ以外は、あんまり分かっていなかったので調べてみました。自分の理解を深めるためにも、文字起こししていきたいと思います。恵比寿様について調べると主に三つの要素がありました。
 
 
一つは、恵比寿様は元々は神道由来の神様、事代主神(ことしろぬしのかみ)であると分かりました。事代主神は出雲神話に登場する神様で、大国主神(おおくにぬしのかみ)の息子に当たります。日本書紀によれば、高天原より派遣された天津神が、大国主神に国を譲れと迫った時に、大国主神は事代主神にどうすべきか相談したとあります。
 
 
事代主神の妻は活玉依姫と云います。文字から察するに、神の魂の依り代となるべき女性と読めます。大国主神は美穂岬という場所から事代主神をわざわざ呼び寄せていますから、何かしらの啓示を受けたかったのではと思えます。事代主神とその妻の活玉依姫は、シャーマン的な職種の人が後に神になっていったのでは?と思えます。事代主神は託宣神であったのでしょう。事代主神は釣りが好きだったので、現在の恵比寿神の姿もそれに因んでいるようです。
 
恵比須様
 
二つ目は海の彼方からやってきた漂着神というものです。恵比寿は一文字で「夷」とも書きます。この夷という文字は「他国(異郷)からやって来た存在という意味があるそうです。初めは名も無い漂着神を「エビス」と呼んで信仰するようになったのは漁民だったようです。
 
 
彼らはイルカやクジラといった大型の海中動物や、水死体、海から上がった石、海岸に漂着した物もエビスと呼び、祀ることもあったそうです。海や山は異界と考えられたので、海からもたらされた不思議なものは神として祀られたのでしょう。やがてエビスは人々に福徳を齎し、漁に出る船や人を守る神として崇められるようになりました。後に流通の発展と共に運輸の神となり、商業の発展と共に商いの神になっていきました。


江戸期頃には大黒様とセットになり、商売屋でよく祀られるようになったようです。名古屋の熱田神宮でも初エビスという商売繁盛の大盛況なお祭りをやっていますが、これを見るに昔から商売の神として人気だったのでしょう。
 
 
三つ目は蛭子神(ひるこしん)です。恵比寿信仰を調べると、元々海から来た海神が商売の神になっていくのに貢献(全国に広めた)した神社が出てきました。兵庫県西宮市にある西宮神社です。西宮神社のHPを見ると、神社の創建理由は、「大阪湾の、神戸・和田岬の沖より出現された御神像を、西宮・鳴尾の漁師がお祀りした」ことが切っ掛けのようです。
 
 
やはり海(異界)からやってきた漂着神というイメージです。また西宮神社の主祭神は「えびす大神(蛭児大神)」とあります。蛭子神とは、記紀神話によりますと、イザナギノミコトとイザナミノミコトが国造りをする過程で様々な神々を産みましたが、最初に生まれた神がこの蛭子神です。蛭子神は発育がよくなく手足が萎えており、三年経っても立つことは無かったので、イザナギノミコトとイザナミノミコトは葦の船に乗せて流したそうです。
 
 
蛭子神は西宮神社では「夷三郎明神」とも言います。これは「源平盛衰記」に出てくる話で、イザナギノミコトとイザナミノミコトに流された蛭子神は、西宮の海辺に流れ着き、夷三郎の名前で祀られるようになったという事です。
 
 
記紀神話に出てくる蛭子神の話と、西宮神社の来歴の話、どちらも海から来た漂着神というのが分かります。
 
 
いろいろ調べると恵比須様の背景が分かってきましたが、農村部では田んぼの神様とも習合し、台所の守り神ともなったようです。今でも旧家では台所に恵比須様を祀っているのをたまに見ますが、そういうことだったのか。
 
 
日本では神仏習合という考え方が1000年くらい続きましたが、恵比寿神を調べると神道寄りの神様だと分かりました。元々は海から来た漂着神が、人の求めに任せて商売の神、農業の神となっていったのでしょうが、事代主神が習合したのも何か不思議な感じがします。


詳しく調べれば調べるほど良く分かっていない部分が出てくるのも、恵比寿神の面白いところだなと思いました。

恵比須様2



参考文献

日本の神々 多彩な民族神たち 戸部民夫著  新紀元社
八百万の神々 日本の神霊たちのプロフィール 戸部民夫著  新紀元社
日本の神々 神徳・由来辞典 三橋健  学研
日本の神様 読み解き事典 川口健三  柏書房









 
 




 
 

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